フルーツコラムVol.1

もう2、30年前になるだろうか。

今でも忘れられない美味しいりんごを食べた。

それは、山形県朝日町のりんご畑で、冷たい雨の降る中、傘をさしながら樹からもいで食べた蜜入りの「紅玉」りんごだった。クリスピーで香り良く甘味と酸味が共に濃厚、丸ごと齧り付くと果汁がぼたぼたと溢れた。

 

靴が泥だらけで、雨が沁みて来ている事も忘れて夢中で一個食べた。

「こんなにりんごって旨いんか!こういうのを売りたいわ〜‼︎」

ただ、蜜入り紅玉の販売は、未だに実現出来ていない。

紅玉りんごは、果肉が軟化(ボケる)し易いため、とても蜜が入るまで樹に生らせておけず、また、果皮の着色が早いため、内容の完熟を迎える前に収穫してしまうからだ。

 

従って、果肉が締まり酸味が先行する紅玉りんごの市井での立ち位置は「クッキングアップル」となる。

ジョナサン(紅玉りんごの英名)の生まれ故郷(ニューヨーク生まれ)でも、酸味強めで歯触りの良いりんごとしての評価で、蜜入りはあり得ない(好まない)のだから、その時の経験は寧ろ特殊だったのかもしれない。今なら1-MCPが解決してくれるかな?(2021.3.23.)

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